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サスペンション

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出典: フリー百科事典『)』

サスペンションsuspension、懸架装置)とは、主に車両において、路面の凸凹を車体に伝えない緩衝装置としての機能と、車輪、車軸の位置決め、車輪を路面に対して押さえつける機能を持つことで、乗り心地や操縦安定性などの改善を目的とする機構である。またその他の機械類における、防振機構のことをいう場合もある。 語源はサスペンド(suspend、吊るす、浮かせるの意)の名詞形。

目次

[編集] 自動車のサスペンション

黎明期以来さまざまな方式のサスペンションが考案され実用化されているが、前述の2つの機能を満足することができれば、方式による優劣はないといえる。また、サスペンションの取り付け方やその調整によってどのようにでも設定できるため、同じ方式のサスペンションを使用していても、車種によって全く異なる挙動を示す。

乗り心地が悪い車両や競技用車両に対して、「サスが硬い」という表現が用いられることがあるが、正しくは、「ばね定数が高い」(反発力が大きい)および、「ダンパーの減衰力が高い」(姿勢変化を起こしにくく、その時間が短い)と言うことになる。

また、極端に車高を下げるためにばねを取り外した車両に対しても、サスペンションアームやバンプラバー(バンプストッパー)が残っている以上、「ノンサス」と呼ぶことは誤りである。リヤカーや多くの自転車、旧式のオートバイの後輪のように、車軸車台に直付けとなったものが本来の「ノンサスペンション」であり、これらはリジッドアクスルと呼ばれる。この固定車軸に緩衝装置を取り付けたものがリーフリジッドをはじめとする車軸懸架方式で、実用的なサスペンションとしては最も歴史が長い。

[編集] 方式

次世代の自動車の走行するときの振動対策として、アクティブサスペンション [1] が、考えられている。

それに対し、旧来の、ばねなど緩衝材を使った懸架装置は、パッシブ・サスペンションと分類される。

動作形式から車軸懸架リジッドアクスル・サスペンション)、独立懸架(インディペンデント・サスペンション)、可撓梁式(トーションビーム・サスペンション)に分けられる。

[編集] 車軸懸架方式

I形ビームのリーフリジッド式

左右の車輪を車軸(アクスル)で連結したサスペンション形式で、馬車時代から続く、長い歴史を持つ。

車軸懸架方式は、ドライブシャフトがアクスルハウジング(ホーシング、アクスルチューブ)に守られており、そのドライブシャフトにも角度がつかないためユニバーサルジョイントが不要であり、構造が簡単で耐久性が高い、タイヤの対地キャンバー変化が少ない、ロールセンターが高い(やじろべえに対する駕籠に例えられる)といった長所がある。

また、ホイールトラベル(ストローク)が大きく取れること、タイヤの変形以外デフ下の最低地上高の変化が無いこと、左右のサスペンションが連動して動作することなど、悪路走破性を重視する場合には非常に有利となる。

反面、バネ下重量が重く、極低速時以外の路面追従性や乗り心地が悪いなどの短所がある。

大型自動車商用車クロスカントリー車での採用例が多い。

スプリング
ショックアブソーバー
ストラット(支持筒)
が一体となった、
ストラット式サスペンション
カートリッジ(左の2本)

[編集] 独立懸架方式

左右の車輪が独立して動作するサスペンション形式。バネ下重量が軽く、乗り心地や路面追従性に優れる。そのため、スポーツカーレーシングカーに留まらず、現在では、一般的な乗用車や中型以下の貨物車、さらには三菱観光バスでも、フロント・サスペンションは独立懸架が採用されている。また乗用車では、リア・サスペンションにも独立懸架が多く用いられ、インディペンデント・リア・サスペンション (Independent Rear Suspention) の頭文字をとってIRSとも呼ばれる。

独立懸架方式の例

一般には、独立懸架式の方が以下の点で固定車軸に比べると有利とされているが、現在の多くの乗用車が後輪に駆動機構をもたない前輪駆動(FF)方式であり、この場合は必ずしも独立懸架式が有利とはいえない。

  • 独立懸架式の優位点
    • 両輪が同時に上下する固定車軸と異なり、動作部分の重さ(バネ下重量)が軽く、動作が機敏になるため路面への追従性がよい。
    • ストローク時のジオメトリー変化を利用した操縦特性の変更が可能(ジオメトリー変化にはデメリットもある)。
    • 車軸ごと上下する固定車軸に比べて自動車の床を低くすることができる。

[編集] 可撓梁懸架方式

可撓梁式(かとうばりしき)とは、前輪駆動車の後輪やトレーラーなど、駆動機構を持たない車輪で、構造の簡易化と路面追従性の向上を図ったものである。「撓」(たわみ)を許容する「梁」で結ばれているため、独立懸架ではないが、左右の車輪にはある程度の自由度が与えられている。

ほとんどが鋼板プレス製の部品を溶接した一体構造で、部品点数が少なく、可動部(関節)を持たないため、生産コストが非常に低い。

ハブが剛結であるため、独立懸架ほどのジオメトリー変化を与えることはできないが、サスペンション自体のたわみで対地キャンバーを変化させる手法や、ピボットブッシュの剛性を調整し、横Gがかかった際にサスペンションの枠ごと変位させ、姿勢安定を図る手法が採られている。

可撓梁懸架方式の例

[編集] 構造

一般的な自動車のサスペンションは、基本的にはサスペンションアームスプリングショックアブソーバーの三要素により構成される。欧米ではスプリングショックアブソーバーが一体となった部品をコイルオーバー(Coilover)と称する事もある。日本では「車高調」と略される車高調整式ショックアブソーバーも、欧米圏では広義の意味のコイルオーバーに含まれる。

自動車で最も多いのが、コストで有利なストラット式である。ついで、古典的なものでは乗り心地の向上(ニーアクション)のため、最近のものでは、タイヤの接地条件やクルマの姿勢(ロールセンターやアンチダイブ、アンチスクワットなど)を細かくコントロールする目的で、ジオメトリー自由度の大きいダブルウィッシュボーン式が、さらに大エネルギー時の安定性を得るためにマルチリンク式などが用いられるようになってきた。ちなみに、F1などのフォーミュラカーのサスペンションはダブルウィッシュボーン式に分類される。

また、固定車軸式にも独自のメリットが多いため、用途に応じて使われている。

俗に"サス(サスペンション)がへたる"というが、実はこのときにへたっているのは、ほとんどの場合はショックアブソーバーブッシュなどのゴム系部品で、スプリングが劣化していることは稀である。

[編集] 戦車のサスペンション

戦車が開発された当時は、サスペンションは存在しないか、ないに等しい状況であった。後に、戦車が機動力を持ち得るためにはサスペンションは不可欠な存在であることが認識され、その重量と要求する速度にあったサスペンションが採用されるようになる。サスペンションの選択は戦車製造における工程上において車体製造上の重要な要素であり、生産性を左右するものの一つである。

歴史上存在する戦車に取り入れられたサスペンションとして、リーフスプリング、コイルスプリング、クリスティー式、トーションバー式、油圧式などがある。

[編集] オートバイのサスペンション

オートバイのサスペンション(ドゥカティ・ムルティストラーダの後輪側サスペンションユニット)

オートバイに使われるサスペンションには幾つかの形式が存在し、それぞれに長所と短所がある。そのほとんどの形式ではスプリングショックアブソーバー(ダンパー)が一体の「サスペンションユニット(クッションユニット)」となっており、スプリングとショックアブソーバーが別体となった形式はオートバイではまず見られない。

懸架装置としてのサスペンションが操舵装置とは独立していて操縦特性へ影響しにくい自動車と違って、オートバイのサスペンションは緩衝装置として作動した際の車体姿勢変化が比較的大きく、それによる操縦特性への影響が大きい。特に前輪側サスペンションは操舵装置の一部を兼ねている場合が多い為に、この傾向が顕著である。こういった特徴がある為に、オートバイでは前輪側と後輪側で異なるサスペンション形式を採用する場合がほとんどである。

[編集] 前輪

緩衝装置としてのオートバイの前輪側サスペンションは、後輪側よりも早い時期から登場した。オートバイの前輪側サスペンションはそれが操舵装置の一部を兼ねている場合がほとんどで、その為にオートバイの前輪専用ともいえる形式が多い。歴史的にはガーダーフォークアールズフォークといった幾つかの形式を経て、現在は多くの車種でテレスコピックフォークと呼ばれる形式が採用されている。

テレスコピックフォークでは、ホイールとフレームを繋ぐ「フロントフォーク」と呼ばれる部分が内筒(インナーチューブ)と外筒(アウターチューブ)で構成された真っ直ぐな筒状で、この外筒と内筒が繰り出し式望遠鏡(テレスコープ)のように伸縮して内部のスプリングとダンパーで衝撃を吸収する。テレスコピックフォークには大きく分けて、外筒が下側になる「正立式」と、外筒が上側になる「倒立式」の2種類がある。倒立式はより大径で剛性の高いアウターチューブがフレーム側に組み込まれるので、正立式に比べてヘッドパイプ周辺の剛性が高くなりバネ下重量が小さくなる利点がある。しかし、アウターチューブが正立式よりも長くなる傾向がある為に全体の重量は重くなり、かつ正立式に比べて高価となる欠点もある。

テレスコピックフォーク以外の形式としては、前述のガーダーフォーク、アールズフォークの他に、小排気量スクーター等に採用例が多いボトムリンク式(リーディングリンクとトレーリングリンクの2形式)、サックストラック(BMWテレレバーとして採用)、ホサックフォーク(BMWデュオレバーとして採用)、そして採用例は少ないながらダブルウィッシュボーン式(ビモータハブセンターステアが有名)などがある。テレレバーやデュオレバーは開発元のBMWが自社製品でほぼ独占的に採用している。

[編集] 後輪

初期のオートバイには後輪側に緩衝装置がない車種も多かったが、前輪側に遅れて後輪側にも緩衝装置としてのサスペンションが採用されるようになった。オートバイでは後輪駆動がほとんどの為に、駆動装置との相性を考慮した形式が採用される場合が多い。なお現在でも、後輪側に緩衝装置を持たないオートバイの車種がごく少数ながら存在する。

現在では、そのほとんどがスイングアーム式だが、かつてはプランジャー式ハブクッション式といった形式も存在した。現在主流のスイングアーム式は更に細かく分類され、ホイールを挟むようにサスペンションユニット2個を左右に振り分けて取り付けた「2本式」、スイングアームの支点に近い位置にサスペンションユニットを1個取り付けた「1本式」、リーフスプリングを用いたもの等、様々な派生形式がある。

なお、特殊なスイングアーム式としては、「パラレログラモ(マーニ)」や「パラレバー(BMW)」、「CARC(Cardano Reattivo Compatto, compact reactive shaft drive)(モト・グッツィ)」等と呼ばれる、スイングアームが並行に2本となった形式もある。これはシャフトドライブ特有の加速時のテールリフトを抑える為の形式で、チェーンドライブの車種ではみられない。

[編集] 鉄道車両のサスペンション

鉄道車両での緩衝装置も自動車などと同様、軌条への追従性、車両の安定性、乗り心地の向上が目的である。ただし、舵取り装置が不要なことと、「前後どちらの向きでも同じ速度で運転される」という鉄道車両特有の運転方法のため、自動車とは構造が大きく異なる。

鉄道車両の場合、ゴムタイヤ方式や超低床電車などを除き、左右の車輪は車軸と一体となっているため、線路と接する最小単位となる四輪の軸受けに適切な懸架装置を用いていないと、軌道の狂いに対応できず、速度を上げた場合や輪重の不均等が起こった際には脱線につながる。ごく初期の実験的な鉄道やトロッコなどで懸架装置の無いものが見られるが、トロッコでは左右輪が独立して回転できるようにするなど、簡易な方法ながら脱線につながる車輪の線路への乗り上げを防いでいる。

鉄道の黎明期には機関車以外の客車貨車二軸車であり、車軸の支持方式は、台枠に固定された軸箱守(ペデスタル)を位置決めに用い、緩衝に重ね板ばねを用いていた。これは現在でも二軸貨車などに用いられている。

その後車両の大型化と高速化が進み、固定車軸では対応できなくなり、ボギー台車が生まれる。台車線路への追従性は軸箱を支持する軸ばねが担い、乗り心地に関しては台車と車体の間に備わる枕ばねが受け持つ分業となった。この点で自動車のサスペンションとは一線を画す。詳しくは鉄道車両の台車史鉄道車両の台車を参照。

新幹線鉄道において、高速走行時の車両の安定化を図るために、JR西日本の開発した500系 において、アクティブサスペンションを取り入れ、これにより300km/hでの運行を実現した。

[編集] 家具におけるサスペンション

サスペンション・チェア
主に事務用の椅子において、人の身体の触れる部分の表層にクッション性と通気性を兼ね備える目的で用いる弾性樹脂により製造された網目状の布若しくは材料。サスペンション・ファブリック若しくは SF(Suspension Fabric) と呼び、この材料を用いた椅子はSFチェアーやメッシュチェアーの名で呼ばれる。
サスペンション・ファブリックを用いた椅子の多くは、鋼製若しくは高強度の樹脂を成形した剛性の高いフレームにサスペンション・ファブリックを緊張して張ることで、メッシュによる素通し感や簡素化された仕組みの外観の割りにデザインにエルゴノミクス(人間工学、作業姿勢、 ergonomics )を盛り込んでいるため、クッション性に優れ、座り心地がとても良い。

[編集] 建築におけるサスペンション

サスペンション工法
建築物の外装材として用いられることの多いカーテンウォール部材では低層階部分で採光・開放性・デザイン性等を求めて巾2m内外、高さ4-5m程度の大判のガラスを建物側面に用いることがある。
この時、ガラスには外装材の役割として風圧に耐える厚みが求められ、且つ、人や物が衝突して容易に破損しない耐衝撃性が機能的に求められ、20mm程度の厚みになることが多い。
ガラスの比重は約2.5 - 3.0程度であり1枚当たりのガラス重量は数百kgになる。一般的な小規模なガラス板ではガラスの重量はサッシュ下辺に伝達されるが、大判ガラスの場合は全ての重量をサッシ下辺のみで支持することは施工性や費用面で容易ではない。
サスペンション工法ではガラス上端を吊り金物で挟み、上部構造体の梁やスラブに緊結してガラスの重量を分担することで問題を解決している。

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

ウィキメディア・コモンズ

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